自宅で簡単にできる腕立て伏せはその種類やコツ・正しいやり方・呼吸方法・回数設定を知ることで、有効に大胸筋や腕の筋肉を鍛えられます。ジムに通う時間がない、自宅にダンベルやベンチを置くスペースがないという方のために、有効な種類とそのやり方とコツ(呼吸法や回数設定や負荷の増やし方など)を解説します。
また、あわせて高強度の腕立て伏せや、通常の腕立て伏せができない女性のダイエットや高齢者の健康体力維持に有効で簡単な腕立て伏せの種類とやり方もご紹介します。
・Wikipediaによる腕立て伏せに関する記載
腕立て伏せ(うでたてふせ)は、筋力トレーニングの1つ。体育学では「腕立て伏臥腕屈伸」とも呼ばれる。英語では push-up(プッシュアップ)。うつ伏せの状態から、全身の体重を両手と両爪先の4箇所で支え、両腕を伸ばす力(肘関節を曲げた状態から伸ばす動き)によって身体を持ち上げる動作と、肘関節を曲げて身体を地面に付かない程度まで下げる動作を繰り返すのが基本的な方法である。
目次
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■腕立て伏せの効果がある筋肉
●大胸筋を中心に三角筋と上腕三頭筋に効果がある
腕立て伏せの効果が身体のどの部位に効果があるかと言えば、まずは胸の筋肉・大胸筋です。そして、副次的に肩の筋肉・三角筋や腕の筋肉・上腕三頭筋にも高い効果があります。また、手の置き方など、やり方や種類を変えることで、大胸筋のなかでも効果がある場所が変わったり、三角筋や上腕三頭筋を優先的に効かせることも可能です。
各筋肉の構造と腕立て伏せの効果をさらに詳しく解説していきます。
●大胸筋
大胸筋は、体幹上部前面に位置する筋肉で、主に「上部」「下部」「内側」「外側」に分けられます。その作用と特徴は、それぞれ以下の通りです。
・大胸筋上部
腕を斜め上方に押し出す作用があり、三角筋前部と強い共働関係を持ち、鍛えることで胸全体を上方に引き上げ、①男性ならば見栄えのよい胸周りになり、②女性ならば胸回りのボリュームアップに効果があります。
・大胸筋下部
腕を斜め下方に押し出す作用があり、上腕三頭筋長頭と強い共働関係を持ち、鍛えることで胸全体のボリュームがアップします。このため、①男性の身体作りだけでなく女性の胸回りのボリュームアップにも重要な部位です。
・大胸筋内側
腕を前方で閉じる作用があり、前鋸筋と強い共働関係を持ち、鍛えることで大胸筋全体が内側に寄り、①男性では谷間のくっきりとしたメリハリのある胸まわりになり、②女性にはバストを寄せる効果があります。
・大胸筋外側
腕を開いた上体で閉じる作用があり、小胸筋と強い共働関係を持ち、鍛えることで小胸筋との連動性が高まります。①男性の場合は大胸筋の筋力増大に、②女性には胸回りのボリュームアップに効果があります。
・Wikipediaによる記載
大胸筋(だいきょうきん)は、胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうち、鎖骨、胸骨と肋軟骨(第2~第7前面)、腹直筋鞘の3部を起始とし、上外方に集まりながら、上腕骨の大結節稜に停止する。大胸筋を鍛える筋力トレーニング法には多くの種目が存在する。最も手軽で一般的なのはプッシュアップ(腕立て伏せ)であり、バーベルを使ったベンチプレス、ダンベルを使ったダンベル・フライなどもよく知られている。身体前面に位置し、もっとも目立つ筋肉の一つであることからボディビルなどでは重要視される筋肉の一つ。
●三角筋
三角筋は前部・側部・後部の三部位に分けられ、それぞれ主に「腕を前に上げる」「腕を横に上げる」「腕を後ろに上げる」作用があります。鍛えることで、①男性では男らしい広い肩幅が得られ、②女性では肩こりの解消につながります。
・Wikipediaによる記載
三角筋の肩甲棘部は肩甲棘から、肩峰部は肩峰から、鎖骨部は鎖骨の外側部の1/3からそれぞれ起始し肩関節を覆う様に外下方へと走り上腕骨三角筋粗面に停止する。運動は肩関節を支点にして肩甲棘部が上腕を伸展・内転・外旋させ、肩峰部が上腕を外転させ、鎖骨部が上腕を屈曲・内転・内旋させる。「投げる」ことに関係の深い筋肉であり、投擲系のスポーツでは特に重要視される。ボディビルなどでもこの筋肉の発達が不十分だと肩幅が狭くなり、頭が相対的に大きくなって格好悪くなるのでトレーニングを必要とする。腕立て伏せやベンチプレスなどを行なうことでも充分に鍛えられる筋肉だが、専門的な筋力トレーニングを必要とするのであればフロント・レイズ、サイド・レイズなどのレイズ系の種目、もしくはショルダー・プレスなどが有効。
●上腕三頭筋
上腕三頭筋は短頭と長頭(内側頭・外側頭)に分けられ、それぞれ「肘関節伸展」「肘関節伸展および上腕内転」作用があります。鍛えることで、①男性は太い腕になり、②女性は二の腕引き締め効果が得られます。
・Wikipediaによる記載
上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん、Triceps brachii)は人間の上肢の筋肉。腕を伸ばした時によく浮き出る筋肉である。作用としては肘の伸展を行う。長頭は上腕を伸展および内転する。伸展時には肘筋と共に協調して働くが、純粋に肘の伸展をする主動作筋は肘筋である。前腕伸展位の拮抗筋は上腕二頭筋となる。前腕の回内は円回内筋、方形回内筋などと協調して働く。ボディビルなどで、上腕部のトレーニングを行う際には、つい上腕二頭筋(いわゆる力こぶ)ばかりに集中しやすいが、筋肉全体の太さだけで言えば上腕三頭筋の方が太いため、こちらを鍛える方が、より太い腕にする近道であるといえる。
■腕立て伏せの効果を高める呼吸法
●上がる時に吐き下ろしてから吸う
腕立て伏せに限ったことでなく、筋トレや運動全般に言えることですが、骨格筋は呼吸の吐く時に緊張し、吸う時に弛緩します。ですので、腕立て伏せでは力を入れたい=上がる時に息を吐いて筋肉を収縮させ、元の位置に戻ってから吸うのが最も効率的な呼吸法になります。
■目的別の腕立て伏せの回数設定
●筋肥大なら10回、ダイエットなら20回を目安に
骨格筋には大きく二種類があります。それは、鍛えると筋肥大を起こす性質の瞬発筋(白筋)と、筋密度を上げる性質の持久筋(赤筋)です。
前者は10回前後の反復で限界がくるトレーニング、後者は20回前後の反復で限界がくるトレーニングによって鍛えられます。ですので、筋肥大目的で腕立て伏せをするなら10回前後、ダイエット目的なら20回前後の回数設定が最適です。
筋肥大目的なのに10回以上できる人は、動作をゆっくりとして一回一回の負荷を強め、ダイエット目的なのに20回できない人は、膝をついて行うなどの方法で負荷を弱めてください。
筋繊維の種類とそれぞれに適切な負荷回数設定を、さらに詳しく解説すると次のようになります。
●筋繊維の種類と負荷回数設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
およそ10秒以内の短時間に瞬発的な収縮をし、鍛えると強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
30~60秒ほどの持続的かつ瞬発的な収縮をし、鍛えると程よく筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上の持久的な収縮をし、鍛えると筋密度が向上し引き締まります。20回以上の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
つまり、バルクアップ目的なら①、細マッチョや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で腕立て伏せを行っていきます。
・厚生労働省による記載
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。老化が早く、20歳前後から急速に衰えるといわれています。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。年齢を重ねても衰えにくいといわれています。骨格筋の収縮は、筋繊維の中にあるアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる化合物が分解してリン酸基がひとつはずれ、アデノシン二リン(ADP)になるときに発生するエネルギーを利用しています。
・Wikipediaによる記載
筋線維には大きく2種類あり、ミトコンドリアに富んで酸素を利用した持続的な収縮の可能な遅筋線維(Type 1、赤筋、色の原因は、酸素結合性タンパク質、ミオグロビンである)と、ミトコンドリアは比較的少なく解糖系による瞬発的な収縮の可能な速筋線維(Type 2、白筋)にわけられる。速筋線維の中でもやや持続的収縮に向いたものはType 2a、そうでないものはType 2X、Type 2bとさらに細分される。なお、遅筋線維、速筋線維はそれぞれ遅筋、速筋と呼ばれることが多い。さらには、両者の性質を備えた中間筋の存在も認められている。
■腕立て伏せの負荷の増やし方
●ゆっくり動作をして効かせる
特に筋肥大目的の場合に問題になるのが、筋力が強くなり10回はおろか何十回も反復ができるようになることです。この場合、ウエイトを背負って腕立て伏せをする方法もありますが、最も手軽なのは、極めてゆっくり動作をして、10回前後の反復で限界がくるように調整する方法です。
特に、身体を押し上げた状態から元に戻る時に、重力に逆らいながらゆっくりと動作することを「ネガティブトレーニング」といい、筋肥大に有効な伸張性収縮=エキセントリック収縮により、高い筋肥大効果が得られます。
・厚生労働省による記載
スロートレーニングとは、筋肉の発揮張力を維持しながらゆっくりと動作するレジスタンス運動のひとつの方法です。比較的軽めの負荷であっても、ゆっくりと動作することで大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができます。関節や筋肉にかかる負荷が小さいことから、安全に行える有効なレジスタンス運動として期待されています。
■腕立て伏せは毎日やっていい?
●まずは超回復理論を知る
筋肉は筋トレによって負荷を受けると、筋繊維が破壊されます。そして、回復する時に、負荷を受ける前よりも強くなって回復する能力が備わっており、これを「超回復」と呼びます。
この超回復という筋肉の特性を利用し、定期的に筋トレによって意図的に筋繊維を破壊し、筋肉を強くしていくのが「筋トレと超回復」の基本理論です。
よく「超回復理論は証明されていない」という記載もありますが、公的機関のホームページにもしっかりと記載されていますので、筋トレはやはり超回復理論にのっとって行うことが大切です。
●回復期間がいるので毎日やるのはNG
筋肉は腕立て伏せなどの筋トレをすると筋繊維が破壊され筋肉痛になります。そして、回復するときにより強くなったり、より引き締まったりします(前述の回数設定による)。それを超回復と呼ぶことは上で解説しました。
超回復には20代~30代前半で48時間、30代後半~40代で72時間がかかり、回復前に負荷を与えると目的とは逆に、筋肉は弱くなってしまいます。ですので、腕立て伏せを毎日やるのは間違いで、年齢による回復期間にあわせて、1週間に2~3回のトレーニングが最適です。
・厚生労働省による記載
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
●腕立て伏せに使う筋肉の超回復期間
腕立て伏せに使われる筋肉の超回復期間は、一般的には以下の通りです。ただし、年齢・性別やスポーツ経験(現在日常的にスポーツをしているか)によって、かなり個人差があります。
○大胸筋:胸の筋肉で腕を前に押し出す作用があり、約48時間で超回復します。
○三角筋:肩の筋肉で腕を上・前・横・後ろに上げる作用があり、約48時間で超回復します。
○上腕三頭筋:腕の後側の筋肉で肘関節を伸展させる作用があり、約48時間で超回復します。
●腕立て伏せは二日おきに行うのが適切
筋トレと超回復の理論、そして腕立て伏せに使う筋肉の標準的な超回復期間を考慮すると、毎日腕立て伏せを行うのは非効率であり、48時間以上の間隔を置き、二日おき、つまり週に2~3回程度の頻度で行うのが適切です。
■腕立て伏せの消費カロリー
運動カロリーよりも代謝カロリーの効果が高い
腕立て伏せで消費される運動カロリーは、1回あたり約0.4kcalです。100回やっても40kcal(おにぎり半個分)にしかなりません。
しかし、腕立て伏せがダイエットに効果があるのには理由があります。上述のように、腕立て伏せをすると筋肉痛になり、超回復反応が起こります。この回復に必要な代謝カロリーは数百kcalになると推測されており、運動カロリーを上回るダイエット効果があるのです。
・厚生労働省による記載
身体活動によるエネルギー消費は、運動によるものと、家事などの日常生活活動が該当する非運動性身体活動によるものの、大きく2つにわけることができます。個人差がありますが標準的な身体活動レベルの人の総エネルギー消費量(24時間相当)のうち、身体活動によって消費するエネルギー量は約30%を占めます。総エネルギー消費量(24時間相当)は、大きく基礎代謝量(約60%)・食事誘発性熱産生(約10%)・身体活動量(約30%)の3つで構成されています。そのうち、基礎代謝量は体格に依存し、食事誘発性熱産生は食事摂取量に依存するため、個人内での変動はあまり大きくありません。総エネルギー消費量が多いか少ないかは、身体活動量によって決まります。
■腕立て伏せができない時のコツ
●肩・肘・手で直角を作るのが正しいやり方
腕立て伏せができない人には2パターンがあります。1つは単純な筋力不足で、この場合は後述の「膝つき腕立て伏せ」などの強度の低い腕立て伏せバリエーションで基礎筋力を上げていかなければなりません。
もう1つのパターンは、正しいやり方・コツを知らないのでできない、というケースです。上の写真が正しいフォームですが、そのように肩・膝・手で直角を作るように構えると力が無駄に逃げなくなり、意外と簡単にできるようになります。
また、肘が常に手の真上にくるように動作することで、体重を前腕骨で支えることができるため、効率的に動作を行うことができます。このポイントを押さえるだけで、腕立て伏せができなかった人ができるようになるケースもありますので、是非チャレンジしてみてください。
■大胸筋を四つの部位に分けて考える
●部位別に腕立て伏せの種類をかえて鍛えると有効
腕立て伏せで鍛える第一のターゲットになる筋肉が胸の筋肉・大胸筋です。大胸筋は大きく「上部」「下部」「外側」「内側」に分けて考えることができ、そして、それぞれに適した腕立て伏せのやり方がありますので、ここからは部位別に有効な腕立て伏せの種類とそのやり方のコツを解説していきます。
■腕立て伏せの種類とやり方
●大胸筋全体に効果のある基本的な腕立て伏せ
基本的な腕立て伏せは、大胸筋・三角筋・上腕三頭筋全体に有効です。まずは、正しいやり方とコツを覚えましょう。
この図のように、動作中、体幹は真っ直ぐに保つようにするのがコツです。お腹が突き出したり、背中が曲がっては効率的に大胸筋を刺激することができません。
手の置く位置は、肩幅よりやや広くし、肩関節から頭より(上方向)には絶対に置かないようにしましょう。肩関節損傷の原因となります。この図のように、やや足側(下方向)に構えるのが正しいやり方とコツです。
なお、腕立て伏せの模範的なフォームについては、こちらの動画もあわせてご参照ください。
【正しいやり方と手順】
①肩幅よりやや広く手幅をとり、背すじを伸ばし、肩甲骨を寄せて構える
②肩甲骨を寄せたまま、肘が手の真上になるように身体を下ろす
③身体を押し上げ、最後に顎を引いて大胸筋を完全収縮させる
●大胸筋内側と上腕三頭筋に有効なナローポジション
こちらのように狭い手幅で腕立て伏せを行うと、大胸筋の内側と上腕三頭筋に強い刺激を与えることができます。動作のコツは肘を開かないことがコツです。通常の腕立て伏せに次いでおすすめのやり方です。ボールなどに手を置くと手首に負担がかかりません。
手首への負担を減らすために、親指と人差し指でダイヤモンド型を作って行うことを推奨します。
【正しいやり方と手順】
①親指と人差し指で菱形を作って手を置き、肩甲骨をしっかりと寄せ、背すじを真っ直ぐにして構える
②肩甲骨を寄せたまま、背すじも真っ直ぐに保って身体を下ろしていく
③身体を下ろしたら、反動を使わずに肘を伸ばして身体を押し上げる
④身体を押し上げたら、上腕三頭筋を完全に収縮させる
⑤動作中は、お腹を突き出したり、腰を曲げたりしないように注意する
●大胸筋外側と三角筋に有効なワイドポジション
ナローポジションとは逆に、ワイドに手を構えると、大胸筋外側と三角筋に強い刺激を与えることができます。動作のポイントは反動を使わないことがコツです。反動を使うと、三角筋に過剰な負荷がかかり、肩関節損傷の原因となります。
●大胸筋上部に有効な足上げ腕立て伏せ
こちらのように、足を台などの上において腕立て伏せを行うと、大胸筋上部に強い刺激が与えられます。動作のコツは、お腹を突き出さないことです。
お腹を突き出すと、刺激が大胸筋の下方向に逃げてしまいます。どちらかと言えば、すこし腰を上に曲げるくらいのほうが、大胸筋上部には有効です。
【正しいやり方と手順】
①肩幅より少し広く手を置き、足を台などの上に乗せ、肩甲骨をしっかりと寄せて、背すじを真っ直ぐにして構える
②肩甲骨を寄せたまま、背中を反らせたり、お腹を突き出したりせずに身体を下ろす
③身体を下ろしたら、肘を伸ばして身体を元の高さまで押し上げる
④身体を押し上げたら、少し顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
●大胸筋下部と上腕三頭筋に有効なリバースプッシュアップ(ベンチディップス)
こちらのようなリバースプッシュアップ(ベンチディップス)は大胸筋下部と上腕三頭筋に強い刺激を与えられます。動作のコツは、肘を開かないことです。
【正しいやり方と手順】
①足を台などの上に置き、手を肩幅程度にして身体の後ろ側について構える
②肩甲骨を寄せ、上腕が床と平行になるまで下がる
③身体を下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま身体を押し上げる
また、この画像のように、椅子を二つ使用することで、さらに強度の高いリバースプッシュアップの一つ「ディップ」を自宅で行うことが可能になります。
【正しいやり方と手順】
①肩甲骨を寄せて構える
②前傾姿勢をとり、斜め前に身体を下ろす
③上腕が床と平行になるまで下がったら、腕を押し込み身体を持ち上げる
④肘が伸びるまで腕を押したら、顎を引いて大胸筋を完全収縮させる
●前鋸筋を鍛える特殊な腕立て伏せ
大胸筋の共働インナーマッスルである前鋸筋は「肩甲骨が固定された状態」で腕を前に押し出す動作をすることで最大収縮します。このため、前鋸筋を鍛えるためには、動画のような腕を曲げず肩甲骨を固定した腕立て伏せをする必要があります。
■女性や高齢者むけの腕立て伏せ
●普通の腕立て伏せができない人でも簡単にできる膝つき腕立て伏せ
こちらのような膝つき腕立て伏せは強度が低く、普通の腕立て伏せができない女性のダイエットや高齢者の健康体力維持におすすめです。
深く身体を下ろさなくても、大胸筋を中心に上腕三頭筋にも効果がありますので、無理のない稼働範囲でトレーニングを行うとよいでしょう。
ダイエットや健康体力維持に有効な反復回数は20回です。浅めの動作でもよいので、回数をこなすことを目標にしてください。
【正しいやり方と手順】
①膝をつき、肩幅よりやや広く手を構える
②背すじを伸ばし、肩甲骨を寄せて上半身を下ろす
③腕を押し出して上半身を上げ、最後に顎を引いて大胸筋を完全収縮させる
また、こちらの写真のように、家具などに手を置く「斜め腕立て伏せ」も強度が低く、体力に自身のない女性や高齢者むきです。
■ダイエットに有効なプランク
●体幹も鍛えられ一石二鳥
こちらの動画は腕立て伏せの一種で体幹トレーニングに分類されるプランクです。
プランクは普通の腕立て伏せと違い、身体を上下させるトレーニングではなく、姿勢を維持することで大胸筋だけでなく、腹筋や背筋などの体幹インナーマッスルを鍛えることができます。
このトレーニング方法では筋肉は肥大することなく、筋密度が向上するだけなので女性のダイエットに最適です。
目安として30秒停止を目標にするとよいでしょう。
また、こちらの写真のようなサイドプランクは身体の側面に効果があり、ダイエットでのウエスト引き締めにおすすめです。目安はやはり30秒の静止です。
■スポーツ補助に有効な上下運動プランク
●体幹の強化に最適な種類
こちらの動画のような上下運動を組み込んだプランクは、ダイエットだけでなくスポーツ補助としての体幹強化に有効です。
体幹トレーニングをすると、ゴルフ、テニス、野球、サッカーなどあらゆるスポーツに有効ですので、ぜひ、実施してみてください。目安としては、20回の反復動作を目標にしてください。
■高強度腕立て伏せの種類とやり方
●体幹も同時に鍛えるバランスボール腕立て伏せ
こちらの動画のように、バランスボールの上で腕立て伏せを行うと体幹も同時に鍛えることができます。かなりハードなトレーニングですが、効果はかなり高いと言えます。
バランスボール2個を使った腕立て伏せの強度がきついと感じる方は、上の図のようにバランスボール1個に足を乗せることで、体幹を鍛えながらの腕立て伏せができます。
また、この図のようにバランスボールに手を置くと、バランスボールの反発力が補助になり、腕立て伏せが苦手な女性などでも簡単に取り組むことが可能です。
なお、バランスボールはホームセンターなどで安価なものも入手可能ですが、このトレーニングではかなりの圧力がバランスボールにかかるので、スポーツブランド製のアンチバーストタイプものがおすすめです。
●背筋も同時に鍛える腕立て伏せ
こちらの動画のように、腕立て伏せの動作のなかに、ダンベルを片手づつ交互に持ち上げる動作を加えると、本来腕立て伏せでは鍛えることのできない背筋(広背筋・僧帽筋)なども鍛えることができます。
腕立て伏せのかわりに、ベンチ類を併用したプランクをしながらダンベルを引き上げるトレーニングもあります。このトレーニングでは、腕立て伏せやプランクでは鍛えることのできない背筋まで鍛えられるだけでなく、体幹も同時にトレーニングできます。
また、手の置き場所を広くし、180度開いて構えることで、腕立て伏せなのに広背筋を刺激することも可能です。ぜひ、チャレンジしてみてください。さらに詳しく背筋を鍛える腕立て伏せに関しては、下記の記事をご参照ください。
●三角筋と上腕三頭筋に非常に効果の高い逆立ち腕立て伏せ
逆立ちの状態で腕立て伏せを行う逆立ち腕立て伏せは、三角筋と上腕三頭筋の筋肥大に非常に高い効果があります。しかしながら、肩と腕に全体重がかかるため、非常に高強度の上級者向けの自重トレーニングとも言えます。なお、壁などを利用して逆立ちをするとやり易くなります。
【正しいやり方と手順】
①肩幅よりやや広く手幅をとり、壁などを利用して倒立する
②肘が身体の背面に入らないように気をつけて、身体を下ろす
③上腕が床と平行になるまで下がったら、同じ軌道で身体を押し上げる
●パイクプッシュアップ
また、逆立ち腕立て伏せが難しい方は、この動画のようなパイクプッシュアップがおすすめです。
【正しいやり方と手順】
【正しいやり方と手順】
①うつ伏せになり、肩幅より広く手幅をとり、腰を大きく曲げて構える
②肩甲骨を寄せて身体を斜め前に下ろす
③肘が身体の背面に入らないように気をつけ、身体を斜め後ろに押し上げる
●足上げパイクプッシュアップ
こちらのパイクプッシュアップは、足上げパイクプッシュアップと呼ばれるのもので、通常のパイクプッシュアップよりも強い負荷を三角筋にかけることができます。
先にご紹介した、より高負荷種目の逆立ち腕立て伏せの準備・練習種目としても最適です。
【正しいやり方と手順】
【正しいやり方と手順】
①うつ伏せになり、肩幅より広く手幅をとり、台に足を乗せ、腰を大きく曲げて構える
②肩甲骨を寄せて身体を斜め前に下ろす
③肘が身体の背面に入らないように気をつけ、身体を斜め後ろに押し上げる
●大胸筋・三角筋・上腕三頭筋に超高強度な片手腕立て伏せ
一般的な腕立て伏せのなかで、最高強度の腕立て伏せとなるのが、この動画のような片手腕立て伏せです。床につく手は重心をとりやすいように身体の中心に、もう一方の手は腰に置くとやりやすくなります。
●米国軍式最強腕立て伏せ急降下爆撃プッシュアップ
大胸筋のなかで最も体積が大きいのが大胸筋下部です。大胸筋下部を鍛えるために最適なのが米国軍式腕立て伏せの「ダイブボンバープッシュアップ」=「急降下爆撃腕立て伏せ」です。すくい上げるように身体を持ち上げる動作の時に、「腕を下方向に押す」大胸筋下部が主働筋となる軌道が発生します。かなりの高強度・高負荷ですが、それに見あった成果が得られます。
●腹筋も同時に鍛えるスパイダーマン腕立て伏せ
こちらの動画の腕立て伏せは、「スパイダーマンプッシュアップ」とよばれる、まさにスパイダーマンの動きのような腕立て伏せです。通常の腕立て伏せの効果に加え、腹筋・背筋・下半身にも効果があります。
●背筋も鍛えるブリッジ腕立て伏せ
こちらはブリッジ腕立て伏せのやり方を示した動画です。かなりの柔軟性と筋力が要求されますが、背筋を直接的に鍛えることのできる唯一の腕立て伏せです。
僧帽筋・広背筋などの主要背筋群のほかに、長背筋・最長筋・脊柱起立背筋といったインナーマッスルにも有効で、二次的に三角筋後面、上腕三頭筋などの上半身の筋肉のほか、大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)にも効果があります。
●驚異の保持力・プランシェ腕立て伏せ
驚異的な保持力が必要になりますが、完全に足を浮かせた状態で行うプランシェ腕立て伏せは、高強度を超えた超人的な腕立て伏せと言えるでしょう。
●奇跡の片手プランシェ腕立て伏せ
ここまでくると、すでに奇跡的としか言えないのが、こちらの「片手プランシェ腕立て伏せ」です。素晴らしいですね。
●その他の腕立て伏せの種類
腕立て伏せにはまだまだたくさんのバリエーションがあります。その種類とやり方の動画を以下に一覧にしますので、是非ご参照ください。
・インクラインプッシュアップ
こちらがインクラインプッシュアップの模範的な動画で、ポイントは腰を突きだしたり背中を丸めないことです。
腰を突きだしたり背中を丸めたりすると、せっかくの斜め下に腕を押し出す軌道が通常の腕立て伏せとかわらなくなりますので、どちらかと言えば、少しお腹を突きだすくらいのイメージで行うとよいでしょう。
・片足腕立て伏せ
こちらが片足腕立て伏せのやり方です。一回の動作ごとに上げる足を変えるので比較的強度が低めになります。
また、さらに体幹に対する強度を上げたい場合は、2回連続→3回連続というように、片足をあげたまま腕立て動作をする連続回数を増やしていくとよいでしょう。
・クラッププッシュアップ
こちらのやり方が、女性でもやりやすいクラッププッシュアップの動画です。足を大きく開き、身体全体のバランスをとるのがポイントです。ますは数回からはじめ、最終的には10~20回連続で行うことを目標にチャレンジしてください。
こちらが男性向きの足を閉じて行うクラッププッシュアップの動画です。まずは、通常の腕立て伏せから数センチ手を宙に浮かせる練習からはじめ、次に親指同士を軽く触る段階に進み、最終的にきっちりと拍手(クラップ)できるようになる段階がわかりやすく説明されています。
・ヒンズープッシュアップ
こちらが模範的なヒンズープッシュアップの動画です。足を大きく開いてバランスをとるとともに、腰を大きく曲げてパイクプッシュアップのような状態からスタートします。身体を下ろしたら、腰を大きく反らせて上体をすくい上げるような動作で腕を押し上げてください。また、もとのポジションに戻るときは、身体を下ろした時と同一の軌道で戻ることが大切です。
また、女性にとっては後半の戻る動作が体力的にきついと思いますので、こちらのような前半だけのヒンズープッシュアップがおすすめです。
・フロッグプッシュアップ
こちらが模範的なフロッグプッシュアップの動画です。内転筋群への効果を高めるポイントは、足幅は狭く取り、膝を外に開いていわゆるガニ股スタイルで動作を行うことです。
また、下半身の筋肉は動かさず、股関節と膝関節は約90度に保ったまま動作を行うことも下半身へのアイソメトリックス効果を高めるためには重要です。
・グラスホッパープッシュアップ
こちらが、グラスホッパープッシュアップの模範的な動画です。まず、体幹を捻りながら脚を前面に引き寄せ、その後に腕立て伏せ動作を行うのがポイントです。
また、筋力的に通常のグラスホッパープッシュアップができない女性の方などは、こちらの動画のような「膝つきグラスホッパープッシュアップ」がおすすめです。
・プシュアップジャンプ
こちらが、プッシュアップジャンプの模範的な動画になります。かなりハードな全身運動であることがおわかりいただけると思います。この爆発的な動作のなかで、最大に注意すべきポイントは、身体を曲げて足を前に送りジャンプの前動作に入るときに、膝よりも前につま先を送ることです。
つま先が膝よりも後ろにある状態で跳躍動作を行うと、膝関節に大きな負担がかかりますので注意してください。
・360プッシュアップ
こちらが本格的な高難易度360プッシュアップ(トルネード腕立て伏せ)のチュートリアル動画です。できればカッコよくて周りにウケること間違いなしです。是非チャレンジしてください。
・スライド腕立て伏せ
大胸筋内側の作用である「腕を前で閉じる」動きは通常の腕立て伏せでは再現できず、大胸筋内側が鍛えにくいことが腕立て伏せ最大のデメリットです。
それを補うのが、こちらのようなスライド式プッシュアップバーを使った腕立て伏せになります。
・回旋式腕立て伏せ
大胸筋には上腕を内旋(上にした親指を内側に横に回す方向)させる作用もあり、スイベルプッシュアップバーを使った回旋式腕立て伏せは上腕を内旋させることで大胸筋を完全収縮させます。
■腕立て伏せの負荷を倍増させる器具や方法
●ゆっくりとした動作で行うスロートレーニング
腕立て伏せを継続して行っていけば、数十回から百回ほどの反復が可能になりますが、この回数では筋肥大は望めません。大胸筋・三角筋・上腕三頭筋を強く逞しくしたいのならば、やはり10回前後で限界がくる負荷のかけ方をしなければいけません。
そのようなケースで、もっとも簡単の負荷の増やし方・かけ方が「極めてゆっくりと動作をする」ということです。
・厚生労働省による記載
スロートレーニングとは、筋肉の発揮張力を維持しながらゆっくりと動作するレジスタンス運動のひとつの方法です。比較的軽めの負荷であっても、ゆっくりと動作することで大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができます。関節や筋肉にかかる負荷が小さいことから、安全に行える有効なレジスタンス運動として期待されています。
●リュックによる負荷のかけ方
腕立て伏せの負荷の増やし方として、もう一つ手軽な方法が「重りを入れたリュックを背負う」というものです。この場合、肩紐はなるべく短くし、背面上部にぴったりと重りが乗るようにするとよいでしょう。
このほかにも、足を台に乗せて腕立て伏せを行ったり最新式のプッシュアップバーを使用する方法などがあります。
■腕立て伏せバリエーション一覧
腕立て伏せ
膝つき腕立て伏せ
足上げ腕立て伏せ
パイクプッシュアップ
逆立ち腕立て伏せ
ダイブボマープッシュアップ
アーチャープッシュアップ
スパイダーマンプッシュアップ
フロッグプッシュアップ
グラスホッパープッシュアップ
片足腕立て伏せ
T-プッシュアップ
クラッププッシュアップ
ジャンププッシュアップ
バックブリッジプッシュップ
360プッシュアップ
※当サイトの表現するバルクアップとは筋肥大、バストアップとは胸の土台となる大胸筋のバルクアップ、ダイエットとは健康的な体脂肪率の減少、引き締めとは食事管理と合わせた総合的なダイエットを指します。
【執筆者情報】上岡岳|日本アームレスリング連盟常任理事|元日本代表|国際レフリー|ジムトレーナー|生物学学芸員